インクルージョンとは

インクルージョンとは

ダイバーシティ多様性

インクルージョン(Inclusion)とは:包括・一体性

ダイバーシティと同様、重要な経営戦略の一つとして注目されているのが、インクルージョン(inclusion)という概念です。直訳すると、「包括、包含、一体性」という意味で、組織におけるすべての人が対等に組織に参画し、個々の違い、経験や能力が最大限に活かされている状態のことを言います。

インクルージョンを一言で表現すると、「全員参加」型の組織。多様な属性・バックグラウンドを持つ全社員が対等な関係で関わり合うことで、相互に成長・レベルアップする機会が生まれ、個人や組織のパフォーマンスを高めることが可能となります。

「多様な人材を受け入れ、活かすこと」がダイバーシティならば、「多様な人材を受け入れ、活かし、組織として一体感を持つこと」が、インクルージョンの考え方です。ダイバーシティからさらに発展した組織のあり方として重要視されており、欧米企業を中心に「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)」とセットで経営戦略に取り入れられるケースが増えています。

インクルージョンが注目される背景

国内でもダイバーシティに積極的に取り組む企業は増えていますが、
一方で採用した人材を活かすことができず、パフォーマンスを上げにくい環境を生み出してしまったり、
人材流出を招いてしまったりする問題も起こっています。

例えば、企業が多様な人材を受け入れようと、マイノリティの雇用枠やポストを設定した場合。そのポジションに就いた社員に対して、「能力ではなく、目標とする採用数や属性の比率を達成するために採用(登用)されたのだろう」と、周囲が偏った解釈をするケースは多くあります。

そうした暗黙的な排斥や偏見によって、互いの間に壁が生じることで職場内のコミュニケーションが円滑に進まなくなります。当然、チームとして成果を上げることは難しくなりますし、何より居心地の悪さを生んでしまうでしょう。

多様な人材を受け入れるだけではなく、多様な人材が職場に根づき、それぞれの能力が十分に発揮されるためにも、インクルージョンの考え方を全社に浸透させることが大切になってきます。

インクルージョンの浸透を阻む課題

インクルージョンを全社に浸透させる上で障壁となる課題には、以下のようなことが挙げられます。

アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)

アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)とは、自分自身が気づかずに持っている偏った見方や考え方のことです。例えば、「若手よりベテラン社員のほうがリーダーに適している」「女性のほうがきめ細やかで事務作業に向いている」「時短勤務をする社員は仕事よりも家庭優先」など、誰もが無意識に持っている思い込みが当てはまります。こうした根拠のない偏った見方が職場に根強く残っていると、仕事やポスト、育成の機会が平等に得られなくなり、一人ひとりが持つ個性や能力が発揮できなくなります。また、メンバー間に分断や対立が生まれ、より良いチームワークが築きにくくなるでしょう。

心理的安全性の欠如

心理的安全性とは、チームの中で他者からの反応におびえることなく、安心して自分の考えを発言できたり、行動に移したりできる状態のことです。自分の意見が自由に言えない、本音や弱みをさらけ出せない環境の場合、様々な属性・バックグラウンドを持つメンバーが対等に関わり合い、同じ目標・ゴールに向かって協業することは困難になります。チームでベストパフォーマンスを生み出すことは到底、難しくなるでしょう。

インクルージョンへの理解の欠如

ダイバーシティの概念は国内でも広く浸透していますが、インクルージョンに関してはまだまだ知られていないのが現状です。そのため、ダイバーシティを推進して多様な人材を採用しても、互いの異なる価値観をなかなか受け入れられず、メンバー同士の信頼・協力関係が築けないケースは多くあります。また、インクルージョンに対する正しい理解がなされないまま、人事の施策や制度だけがつくられ、成果につながっていないケースも見受けられます。

インクルージョンを浸透させるために

インクルージョンを全社に浸透させるためには、以下のような事柄に取り組むことが大切です。

アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)に取り組む

一人ひとりが無意識の偏見について正しい知識を身につけ、自分の中にどんなバイアスがあるのか、気づくことがインクルージョン推進の第一歩です。個々の意識が変わり、相手に対する見方がフラットになることによって、相手を受容し、尊重する風土が醸成されていきます。対等かつ良好な人間関係やチームワークが育まれ、全社員が自分の能力をフルに発揮しやすい環境が生まれるでしょう。

公平性を確保する

誰もが対等に仕事に参画できるためには、特定の属性が有利、または不利にならないよう、公平性を確保することが大切です。例えば、社員に仕事をアサインする際、中堅以上の男性には責任の重い仕事を与え、子育て中の女性には負担のかからないサポート業務を割り振る、といったケースは度々職場内で起こりがちです。
そうした誰もが気づかぬうちに持っているバイアスや思い込みを外し、本人の実力を客観的に、また多角的に評価することが重要になります。

柔軟で多様な働き方を取り入れる

個々が自分の能力を最大限に発揮するためには、柔軟で多様な勤務形態を設けることも大事なポイントです。時短勤務やフレックスタイム制度、テレワークなど、一人ひとりのライフステージや状況、希望に合わせて働き方を選べることで、負担やストレスが軽減され、パフォーマンスが上がりやすくなります。ただ、こうして様々な勤務形態を用意することは、仕事とプライベートの両立を図ることが目的ではなく、あくまで「個々の最大パフォーマンスを引き出すこと」が前提と考えます。

心理的安全性を高める

心理的安全性が高い職場では、お互いを認め合い、尊重し合う空気があります。批判を恐れず、安心して自分の考えを発言できるため、ちょっとしたアイデアを表に出したり、ミスやつまずいている点を臆せず報告できたりとコミュニケーションが活発化し、チームとして成果につながりやすくなります。心理的安全性を高め、年齢や上下関係、属性に関係なく対等に話し合える環境をつくることは、インクルージョンを浸透させる上で大きな鍵となるでしょう。