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ワークライフバランス

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【日経ビジネスアソシエ】

【日経CSRプロジェクト】


『女性の管理職が多い国では男性の家庭参加度も高い』

多くの企業で女性登用への関心が高まっている。「女性活躍推進室」を立ち上げ、女性の採用・登用・教育訓練を積極的に行い、女性管理職数の目標を設定する動きがあちこちで見られる。しかし、こうしたアプローチでは女性の管理職率は高まらない。日本企業で女性が能力を発揮できるようにするためには、男性の働き方をグローバル化が不可欠だ。
必要な変化のひとつは、男性が家庭責任を果たせるようにすること。欧米では女性の社会進出と同時に男性の家庭進出が進んだ。例えば、米国では25年前に比べ男性の家事関連時間が42分延び、女性のそれは42分減った(*1)。
男女の家事・育児時間に占める男性の割合はスウェーデン37.7%、米国37%、英国29.9%。それに比べ日本は最も低く12.5%だ(*2)。
日本では男性は仕事という免罪符を持っているので、家庭責任を果たさなくてもとがめられることはない。しかしそのような免罪符がない欧米では、管理職男性でさえ1日数時間の家庭責任を担っているのが現実だ。

興味深いことに、欧米のように男性の家庭参加度が高い国々では、女性管理職率が高い。例えば米国では46.6%、スウェーデン30.5%、イギリス30%といった具合だ。一方、男性が家事育児を女性任せにしている国では女性管理職率は低く、日本では8.9%、韓国は4.9%に留まる(*3)。
また、女性の所得や専門職・管理職率などによって政治・経済への参画度を示すGEMの日本の順位は38位で、先進国の中では最低レベル。残念だが、このようにさまざまな統計から、現在の日本の女性活用度は先進諸国の中でも極端に低いことが見えてくる。日本では男性が長時間労働をしているため家庭責任が果せない。そのため、女性に多大な家事育児負荷がかかり、それが女性の仕事での能力発揮の大きな弊害となっている。
ところで、「仕事のために」と言い、家庭責任を放棄して働いている日本男性の仕事の成果はどうなのだろう。IMD国際競争力ランキング(2005年)での日本の順位は21位。また、労働生産性は主要先進7か国中なんと最下位だ。
注目すべき点は北欧諸国や米国など、ランキング上位の国々では、男性の家庭進出度が高く、さらに女性活用度が低い国は1つもないこと。つまり男性が家庭責任を分担する国では、女性が仕事での能力を最大限発揮でき、それが国全体の高い生産性と国際競争力にもつながっている。
日本は昨年、予測より2年早く人口減少時代に突入した。世界一早い速度で人口減少をたどる日本にとり、生産性と国際競争力を挙げることは最重要課題。こうした中、仕事以外の責任を果たせない既存の管理職の環境は変わらざるを得ない。働き方の環境や制度を変え、男性の家庭進出を促進することにより、女性の能力発揮を可能にすれば、企業の生産性も国際競争力も向上できる。実際、諸外国はそうやって経済的成果を達成して、個人と企業と社会のwin-win関係を築き上げることに成功したのだから。

(2006年6月20日号)
※無断引用・転載・流用・修正利用を禁じます。

*1:National Study of the Changing Workforce(2002年)
*2:「少子化と男女共同参画に関する社会環境の国際比較報告書」(平成17年)
*3:「男女共同参画白書」(2003年)

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『人口減少時代を乗り切るには今、仕事だけしていてはダメ』

日本21年、イタリア44年。65歳以上の人口比率が10%から20%に達するのに今から何年かかるかを表している。日本の高齢化が騒がれている。日本の高齢化の進展は同じ問題を抱えるイタリアと比べても驚くほど速い。少子化の進行も急激なため、日本の21世紀は人口減少時代になる。
影響はまずは社会保障制度に表れる。日本の平均寿命は世界一長いうえ、今後の年金の受給開始年齢の引き上げと受給金額の引き下げは避けられない。そのため一般人が経済的に安心して生活するためには、70歳ぐらいまで健康的に能力発揮を維持できる「持続可能な働き方」が不可欠となる。
しかし、現在の日本人の多くは仕事オンリーの働き方で、肉体的にも精神的にも重い負荷が掛かっている。これがいつまで「持続可能」なのかは疑問だ。
もうひとつの影響は、右肩下がり経済による日本的経営の崩壊だ。人口減少は縮小経済につながるため、「拡大経済」を前提にした年功序列や終身雇用を特徴とする日本型経営システムが機能しなくなり、一生一社で働き続けることが極めて難しくなる。
また、グローバルな大競争のあおりを受けて、生産が量から付加価値の高い知的生産へとさらに転換していき、雇用者はますます厳しい基準で選別されるようになる。働く側は知識とスキルを高め続けていかなくてはならない。
こうした中、「キャリア」と「ライフ」と「老後」の3点セットは自己責任になる。もう政府も企業もあなたを守ってはくれない。信じられるのは自分の能力だけなのだ。年をとっても会社から求め続けられる人材になるためには、今後のビジネスニーズに見合い、自分の市場価値を蓄積するための自己投資が必要不可欠となる。
その際、どんな分野に注力するかの見極めが重要だ。例えば資格を取る場合、今現在、流行っている分野をこれから勉強し始めるのでは遅すぎるだろう。日常的に情報収集をして時代の状況や流れを把握し、自分の強みと興味に合った分野の勉強を続ける必要がある。その分野の将来性も考えなくてはならない。自己の強みをさらに高めることによって他人と差別化するのだ。
高齢者は能力と体力の個人差が大きいのも特徴だ。さまざまな調査によると、自己啓発ができない理由や運動ができない理由は「時間がない」からだという。しかし時間は待っても来ないし、待っている間に自分の能力と体力は低下し続ける。その結果、脳録や体力が低いまま止まってしまっても、その結果責任は自分が背負うことになる。
日本でこうした現状に迅速に対応するためには、働きながら「健康維持」「能力開発」や「家庭責任」を担えるようにする必要がある。海外で積極的に進められているワーク/ライフ・バランス(仕事と私生活の共存)への取り組みが、解決策の重要なひとつとなるのではないだろうか。
決め手となるのは個人が「働きながら」自己責任を果たすこと。そしてそれを実現できるような環境づくりにある。知識集約型社会では、従業員の質が高まれば会社の質が直接高まる。企業と従業員がwin-win関係を築きながら社会の質を高める決め手は、企業と個人の「働き方の変革」だ。

(2005年9月20日号)
※無断引用・転載・流用・修正利用を禁じます。

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『育児支援は特効薬にならない本当に少子化を止める策とは』

日本中が少子化に揺れている。2003 年には合計特殊出生率が1.29まで落ち込んだが,実は出生率の低下は最近の現象ではない。あまり知られていないが、1975年に2.0を切って以来30 年間、ほぼ一直線で下がり続けてきたのだ。これは一部で言われている、女性の高学歴化や経済力の向上だけでは説明がつかない。
子供は途上国では家事や家計を助ける「労働力」だが、先進国では「金食い虫」。それなりの理由がなければ、もはや投資効果のない子供を産まなくなるのは自然である。少子化は先進国の宿命だ。
先進諸国では65 年前後から85年前後まで出生率が低下したが、その後の傾向は国により違う。84年には米国・フランス・日本の出生率は同じ1.81だった。それが15年以上を経た近年では,回復してきた米国(2.13, 2000年)やフランス(1.90, 2001年)と日本(1.29, 2003年)の間に大きな差が生じている。
日本では少子化対策といえば育児支援と思われがちだが、実は米国は貧弱な育児支援にもかかわらず、出生率が回復した。フランスは充実しており、日本は米・仏の中間にあたる。また2002年に1.73だったオランダのように、育児支援が手薄でも出生率が高い国もある。このように、育児支援と出生率の間に因果関係を見つけるのは難しい。何が、日本と他の先進国間の出生率の差をもたらしたのだろう。
私は最大の違いは両親の働き方や家事分担にあると思う。例えば保育施設の整備がほとんど進んでいないオランダの場合、週4日づつずらして働く夫婦も多く、保育園利用を週3回ですむ。米国や英国では働き方が弾力的で、男女共に転職が収入やキャリアにマイナスに働かない。つまり、出産の機会費用が低い。また北欧諸国でも、夫の家庭参加率が高い。つまり先進国でありながら出生率の高い欧米諸国の共通点は「仕事」と「家庭」での男女平等が進んでいること。逆にいえば仕事と家庭という双方の「場」での性別役割分担が根強く残る国は出生率が低い。代表例が日本だ。
仕事との男女平等が進まない国では、女性にとって出産は家事負担の増大に他ならない。つまり現在の日本の働き方と社会のあり方を変えない限り「仕事と家庭の両立」は女性にとって単に大変なだけで、夢や憧れの対象ではない。
実際に様様な調査を見ると、多くの女性は「出産したら仕事を辞め、しばらくして再就職する」ことを望む。
こうした状況の中、政府が目指すべきは「子供を産み育てやすい社会」ではない。時間はかかるが、男女が負わされている役割の壁を崩し、子供の有無や結婚・未婚を問わず個人として尊重される社会を目指すべきだ。
それがひいては「結婚して子育てしやすい社会」を作り、結果として出生率の向上にもつながっていくと私は思う。

(2004年12月21日号)
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『少子高齢化を乗り切れる「エイジ・ダイバーシティ」とは』

最近雑誌や新聞などで「多様性」という言葉をしばしば目にするようになった。海外で特に注目されているのが幅広い年齢の人を採用し活用する「エイジ・ダイバーシティ」だ。採用時に年齢基準を設けず、また年齢に係わりなく適切な人事評価をして優秀な人は若くても昇進させる,という考え方だ。世界的に見ても深刻な人口問題を抱えている日本では,私は今後このエイジ・ダイバーシティが極めて重要になる、と感じている。
日本の少子高齢化は侵攻する一方だ。1975 に2.0を切って以来、日本の合計特殊出生率は一貫して下落傾向が続き、ここ数年は過去最低を更新してきた。2003年度は出生率1.29。その率は先進国の中でも際立って低い。毎年低下する出生率の影響で日本人口が2006年をピークに減少していくが、人口減少は社会保障の担い手減少だけでなく、労働力と消費力双方を低下させる。そのため経済成長を阻む構造的な要因となる。
日本の総人口に占める15歳以下の割合は13.9%で、イタリアやドイツより低い。また、日本の総人口に占める65歳以上の割合19.0%は,欧米諸国と比較して最も高い水準だ。つまり子供の割合が世界最低で老人の割合が世界最高。そのため日本は世界で最も速く少子高齢化が進むと言われている。
一方、ビジネスの面から見るとチャンスでもある。戦後生まれの団塊の世代は、それ以前のシニアとは違う価値観や大量消費などの経験を持ち、消費意欲が旺盛なためだ。既に団塊の世代定年後を狙った商品開発やサービスへ戦略を練っている企業もあり、今後シニア向け市場が活発になるだろう。
近年先進諸国でダイバーシティが注目されているのは、ダイバーシティ・マネジメントが女性やマイノリティの雇用だけでなく、人口構成の変化をビジネスに取り入れるのに役立つためだ。消費者の性別や人種,年齢が多様化している現状を適切に把握し、商品やサービスの開発に反映させられれば、間違いなく企業の競争力を強化できる。実際そのようにダイバーシティを推進して成功した事例が海外では多くある。
例えば英国では、政府機関が企業のエイジ・ダイバーシティへの取り組みを奨励するために、ウェッブサイトを制作している。底では優秀な高齢者と若年層を採用するための方法、それぞれの世代に会った多様な勤務形態やキャリア開発の施策などが紹介されている。
日本でも知られているブリティッシュ・テレコム,マークス&スペンサーなどは、既にエイジ・ダイバーシティに取り組んでいる。

私はこれまで世界の様様な企業の,性別や人種、国籍に関するダイバーシティ施策を見てきた。それを踏まえると、今後は高齢者の発想を生かした商品開発の機会が増えると思う。日本でもどの企業がこれらのチャンスへ向けて戦略的なエイジ・ダイバーシティを推進していくか、興味深いものである。

(2004年8月3日号)
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『日本の競争力が30位なのは忠誠心の変化に鈍感だから』

ジェネレーションX。米国で10数年前に米国でその頃の若者につけられた名称で、現在の27歳から39歳ぐらいまでを指す。上の前世代、ベビーブーマーとは異なる価値観を持ち、現在は米国の労働人口の約25%を占める彼らは組織の中では管理職から「扱いにくい」存在だと言われてきた。
彼らが育った70-80年代の米国では女性の社会進出が目覚ましかった。ジェネレーションXの多くは共働きや離婚家庭で育ち、バブル期以降の不況で両親や自分自身がリストラされ、大企業が倒産するのを目の当りにした。だから「信じられるのは自分の実力だけだ」と考えるようになった。
「キャリアは全て自己責任」だから「会社から求められる人材になる」ことを目指し、常に自己投資を惜しまない。プロフェッショナリズムと市場価値を高めるための勉強とネットワーキングに熱心だ。
彼らが会社に求めるものは安定ではなく、短期的な見返りだ。会社への忠誠心は失っていないが「長い時間働き長く勤める」から「今結果を出す」に定義が変わった。彼らの求める、自分が出した成果に対しての「今日・明日・来週」の見返りとは何だろう?
最も大切なものは「家族」、そして自分の人生全体の質を高めること。有能な人ほどワーク/ライフ・バランス(仕事と私生活の共存)を望んでいる。
ここ数年の不況で、ジェネレーションX だけでなく、全世代に「フリーエージェント」マインドが広まった。ほかに選択肢がないことを知ったからだ。自由競争の世界で生き残るためには企業は成果を重視せざるを得ない。「長く働く」人ではなく、「成果を出す」人を評価するしかない。だから成果を出さない人にはそれなりの結果が待っている。
このような環境で働く人々が仕事に対して求めるものは、お金だけではない。年齢、既婚/未婚、子供の有無関係なく、望まれる要素は柔軟な勤務形態だ。いつ(スケジュール)、どこで(場所)働くかだ。個々人の生産性に合わせて働き、仕事での成果を出しながら私生活上の責任や要望を満たすためには画一的な勤務形態では間に合わない。各人に見合った多様な勤務形態が最も必要とされているのだ。
米国企業は働く人々の要求にこたえているのだろうか。
2003年米国企業600社対象に行われた調査での導入率は:フレックスタイム71%,テレワーク50%。他にも多種多様な勤務形態を社員に提供して社員と会社のニーズを満たし、さらに活用率も高い。
多くの人が柔軟な働き方をいている米国は2002年度のIMD国際競争力ランキング1位。ワークシェアリングで著名なオランダは4位で日本は30位止まりだった。
仕事と私生活に満足している社員は質の高い成果を出すといわれる。21世紀に成功する企業になるためには、個人の生産性と満足度を高める柔軟な勤務形態を提示することが不可欠だろう。

(2004年5月4日号)
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『今月のおすすめ「ジェンダー本」
女と男、どっちがつらい? 社会的な性差を考える5冊』

この世には男と女が存在し、社会は両者が歩みよったり離れたりして成り立っている。しかし歴史的には、リーダーは常に男性で、女性は弱い立場に置かれてきた。今回は、男女が現代社会で置かれた状況と、今後変わるべき方向性について考えさせられる本を紹介する。
女性が社会で力をつけてきたのは世界的な傾向だが、日本ではどれぐらい女性が対等に社会や仕事にかかわる環境が整っているだろう。『男女共同参画の時代』は女性の労働事情に精通したジャーナリストが、この問題を歴史的に振り返り、変化の過程を踏まえ、現状を分析した本。著者は日本でも、最近ようやく女性問題が社会変革の中心軸になろうとしていると唱える。

40代男性の4人に1人が独身
政府は男女共同参画を「21 世紀のわが国を決定する最重要課題」と位置づけているが、誤解や偏見を持つ人も多い。男女共同参画社会は、女性だけでなく男性も従来の枠組みから自由になり「自分らしさ」を発揮できる社会を目指す。男女共同参画は今後、政治や経済と共に主流の社会問題になることは必至だ。まずはこの本で正しい知識と理解を身に付けよう。
ところで、私は子供の頃、大人になったら結婚して30歳にもなれば子供は2人ぐらいいるのが自然だ、と信じて疑わなかった。しかし時は流れ、日本は変わった。『シングル化する日本』を読むと日本人の結婚や家族観の変化を再認識できるはずだ。
特に未婚者の急増には目を見張るものがある。2020年の推計では全国どこへ行っても40 代男性の4人に一人が独身で、この世代はそのまま結婚しない確率が高い。標準世帯(両親と子供2人)と専業主婦や出生率の減少、離婚率の継続的増加などをデータで見れば、日本人の価値観が驚くほど変化していることに気づく。問題はこれらの変化そのものではなく既存の社会制度が変化に対応出来なくなっていることだ。
著者は、多様な生き方や状況に対応するため生活の「単位」を標準家族ではなく自立した個人にする「シングル単位社会」を提唱する。未婚、離婚、事実婚、同性愛も差別されない社会を作ろうという著者の発想に共感する人は多いだろう。
海外ではこの「多様性」(ダイバーシティー)は企業の成長にも不可欠な概念と考えられている。今後の日本でも注目を浴びる新しいキーワードになるはずだ。
人はそれぞれ違う、あなたと私、彼と彼女は同じではないという主張は最近の世界的な傾向だ。『話を聞かない男、地図が読めない女』は男女間の様々な差異を科学や社会生物学に基づいたアプローチでユーモアたっぷりに説明しており楽しめる。 
本書に描かれる配偶者や異性の特徴的なエピソードには思わず納得してしまう。男女の違いを差別的にあげつらうのではなく、また平等の観点から違いに目をそむけるのでもなく、これまでと違う角度から見ている点が面白い。男女「同権」は重要だが「同一」にはならなくて良い、男と女が理解しあいながら暮らすために性に基づく違いを理解しよう、と著者は言う。
一方、本書には問題点もある。あまりにも"典型的"な男女を取り上げ一般論を述べている点だ。描かれるエピソードはあくまで「一般的にはこういう女性(男性)が多い」という意味であり「女性(男性)はみんなそうである」と断定は出来ないことに注意しながら読みたい。
例えば本書は「技能、適性、能力の男女差がないとするのは誤り」だと主張するが、筆者が知る米国のデータはこれを覆すものばかりだ。2003年度のハーバード大学卒業生の46%、エール大学卒業生の50%、全米医学部学生の47%、そして全米法学部学生の60%弱が女性である。また米国の企業では専門職・管理職の女性割合は約50%。性差別が少ない社会では、男女間の能力差らしきものは見あたらないのだ。
男女問題において、これまで加害者として描かれることが多かった男性の視点から問題提起をするのが『男の人ってどうしてこうなの』。本書は混乱し行き詰まっている男性の苦しい現状を見せてくれる。
オーストラリアの男性によって書かれたこの本は「孤独」や「脅迫的な競争」など悩める男性の問題を取り上げ、男性が自分を変えるための具体策を提案している。自信を持って肩の力を抜き、充実した内面生活を送れるよう男性解放(メンズ・ムーブメント)を訴える。

女性より男性がかわいそう
本書は世界中で多くの男性の共感を呼び、読者の生き方を変えたという。今後多くの日本男性も従来の「男らしさ」から解放され「自分らしく」生きる選択ができるようになることを期待したい。
違うのは大人の男性と女性だけではない。男の子と女の子も違っている。注目すべきはこの場合、不利な立場にいるのは確実に男の子だということだ。海外では男の子の学力低下や問題行動が懸念され、多くの調査結果や本が発表されている。けれど日本では「男の子」を取り上げたものがほとんどない。少年犯罪を多く取材したジャーナリストが書いた『親父の出番』は少年事件には「思春期特有の問題」があるとの観点から男の子に着目し分析する数少ない本だ。
男としての経験がない母親が息子を育てる難しさ、男の子が一人前の男になっていく難しさが見過ごされていることに気づかせてくれる。思春期の自分自身を振り返りながら読むとうなずけるところが多いだろう。
女である私は、この社会は男の方が有利だと思っていた。けれど可哀想なのはむしろ男かもしれない。小さい頃から「男らしく」と言われ続けてきた男性が「自分らしく」生きられるよう、社会の風潮を変えていけば、男女双方にとって本当に幸せな世の中になるはずだ。

(2004年3月2日号)
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『少年犯罪の9割は男子!企業は父親を家庭に帰せ』

男の子たちが危ない。オーストラリアのスティーブ・ビダルフは著書「男の人って、どうしてこうなの?」(草思社)の中で、「現在の男の子は小さい時から周囲に大人の男性がいない環境の中で育てられ、大人の男性として成長するためのサポートがないまま大きくなっている。そのため適切な内的変化ができず、見かけばかりの男性に成長する。」と指摘した。また「ママから男性になることは学べない」と男の子が成長する過程で年上の男性、特に父親との積極的なかかわりの必要性を強く訴えている。
海外では社会問題増加の一因として父親と男の子の関係に注目が集まり始めた。
「Fatherless America」(米国)や「Boys Trouble」(オーストラリア)などを始めとする父親不在(物理的だけでない)など男の子の影響に関する本が出版されている。またさまざまな調査結果から、父親かそれに代わる大人の男性が男の子にとってのロールモデルであること、幼児期からそれが欠如すると学力や暴力問題に大きな影響があることが分かっている。
欧米では学校での成績や行動(中退,停学,落第,学習障害など)の面で女子に比べてはるかに多くの男子が問題を抱えていることやが認識されている。少年犯罪の9割以上が男子によることから「boys」の発育や問題に関する多くの調査研究が行われてきた。そして男の子の問題行動と少年犯罪の最大の要因は「父親不在」であるとの結論を、多くの専門家が認めている。
欧米諸国では離婚や未婚の母が多いため、物理的に父親のいない家庭が増加しる。両親が揃っていても父親がほとんど家にいない場合は同様の問題が見られる。
様々な調査結果は,父親と接している子供の方が
1)非行を起こす率が低く
2)自尊心が高い
3)中退や停学する率が低い
4)高等教育へ進学する率が高いこと
「父親と良好な関係の中で育った子供の方が幸せになる」ことを示している。男の子を取り巻く環境を改善し、父親が役割を果たしやすくするためSOS(Supporting Our Sons)やNational Fatherhood Initiativeなど男の子の健全な成長や父親業支援に取り組む団体が相次いで設立さえている。
これらを海外での出来事と見過ごすことはできない。実は日本でも男子と男性に関する統計は真剣な現実を教えてくれるからだ。自殺者の7割、引きこもりの8割弱が男性で、「切れる」子供の9割、少年犯罪の9割が男の子。
日本全国で中学生の不登校は37人に1人。また2002年は14万1775万人の少年少女が万引き・ひったくり・暴行・傷害などで検挙された。この世代の60人に一人が犯罪を犯した計算になる。またその数が年々増加しているという現状では、いつ自分の子供に問題が起こっても不思議ではない。日本の場合、両親が揃っていても父親は家族と接する時間をほとんど持てない。子供ともっと関わりたいと願う父親が増加しているのに、国際基準から外れた長時間労働がそれを妨げている。
イギリス政府が2001年に行った調査では
1)75%の父親がもっと息子の教育や成長に携わりたがっている
2)66%の父親は仕事が息子と接する障害になっている
と感じていることがわかった。そして2002年から教育相は「父と息子のキャンペーン」を始めた。内容はこんな具合だ。
父親が息子の教育や成長に関わるためのアイデアやアドバイスが詰まったパンフレットを企業、ファストフード店、映画館などを通して100万部以上配布。多数の著名芸能人やスポーツ選手が支援した。家電メーカーのコメット社は11歳から14歳の息子を持つ父親社員を対象に、息子と一緒に過ごす時間を確保するため一時間早く帰宅できる有給早退制度を導入し、キャンペーンをサポートしている。
日本でも父親に「親の権利」を確保させる企業はいつ出てくるだろう。男の子が健全に育てられれば健全な次世代を作ることにもつながる。
父親からの愛情と日常的なふれあいを一番望んでいるのは日本の息子たちだ。

(2004年1月20日号)
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『実は手厚い日本の育児支援男性の労働時間短縮が真の課題』

既婚労働者の共働き率78%、子供を持つ女性の就業率73%。出産休暇は産前産後無給の12週間。そして一般的な年間保育料は大学の授業料に匹敵する高さ。この国はどこだかお分かりだろうか。米国だ。正社員同士の共働き家庭が多いにもかかわらず、「医療と保育は自己責任」を主張する米国の保育・育休制度は日本よりはるかに劣る。
私の大学時代の友人は3歳の息子がいるシングルマザー。ニューヨークにある「ヴォーグ」誌編集部に勤めて4年になる。給料は高くないのに月10万円の保育料を「満足していない質」の保育ママに払っている。 一方、私の4歳の息子は0歳から都内の区立保育園に通い、資格と経験のある保母さんたちの手厚い保育サービスを受けている。区立保育園の利用料は所得や子供の年齢によって異なるが、月2万円から6万円弱。米国の保育事情を知ると、高品質で手ごろな値段の認可保育園に感謝せずにいられない。
北欧の育児支援制度と比較して「日本は遅れている」と不満を言う人もいるが「ゆりかごから墓場まで」国が面倒を見てくれる北欧の税金は高い。日本の税額に対して、今の育児支援制度は充実していると正当に評価するべきだ。
日本政府は1990年に騒がれた「1.57ショック」以降、少子化への問題意識を持ち、'92年に育児休業法を施行。'95年には休業給付金25%を支給、2001年にはそれを40%に引き上げ、また保育施設を増やしてきた。 しかし政府の努力も空しく、その効果は全く現れなかった。1984年に日本の合計特殊出生率(1人の女性が一生に産む子供の数)は米国と同じ1.81だったが、ここ20年ほぼ毎年過去最低を更新し、2002年は1.32にまで低下した。
 対照的に、国の制度が貧弱な米国の出生率は2.1に上昇。また、共働きが多いその他先進諸国の出生率も日本より高い。なぜか。家事と育児は共働き夫婦が直面する世界共通の課題だ。これを夫婦でどのように分担するかが出生率に大きく影響する、と私は思う。
香港やシンガポールなどのアジア諸国では安い費用で家政婦を雇えるため、働く母親たちの家事・育児負担は軽い。一方、家政婦の費用が高い欧米諸国の共働き家庭では夫が協力して家庭責任を担う。海外の共働き事情をみると、仕事と家庭の両立には「メイドか夫」の助けが必要なことは明白だ。
EU諸国でもイタリア(1.24)、スペイン(1.20)、ドイツ(1.42)は出生率が低い。これらの国と日本は大きな共通点がある。それは男女の役割分担意識が依然として強いことだ。保守的で性別役割分担意識が強い国ほど出生率が低く少子高齢化が進でいる。逆に女性にかかる負担が小さいと出生率が高くなる。
つまり、育児支援制度の充実度より全体的にみた家事・育児の女性への負担度の方が少子化傾向に連動している。子供を産まないことは女性の「無言の抵抗」だからだ。
どんなに、育児支援が充実しても誰かが育児や家事をしなくてはならない。日本では、多くの場合それは女性だ。負担が増える女性が「子育てはソンだ」と感じ産まなくなるのはごく自然である。
ちなみに私の祖国韓国は日本より男女の役割分担が根強いことで有名だ。その韓国では近年共働きが増加し出生率は1.17まで落ち込んだ。当然の成り行きだろう。
しかし明るい兆しも見える。団塊の世代以降の日本男性の価値観が変化してきているからだ。子供を持つ人が多い30代~40代男性が充実感を憶えるのは「家族団欒の時」で「仕事に打ち込んでいる時」を上回る(1999年「国民生活に関する世論調査」)。また、20代・30代の男性の過半数が子供が3歳までの子育ては「父母が同じぐらい協力して携わるのがよい」と答えている(1999年「少子化に関する世論調査」)。
残念ながら現状では日本男性の労働時間はあまりにも長い。日本政府も企業も,出生率の高い先進国のように男性が家庭責任を果たせるような具体的な施策を実行していかない限り,女性の「無言の抵抗」は続き少子化問題は改善しないだろう。

(2003年10月7日号)
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『働く妻は男にとって最大のリスクヘッジ』

「日本の男性には夢がないって本当?」
「誰が言っていたの?」
「雑誌の記事で読んだの」
以前外資系企業に勤めていた時、香港出張した際に現地の同僚からこう聞かれた。日本国内では「男性に夢がない」と言われて久しいが,海外にまでそういう情報が広まっていたことに驚いた。なぜ、日本の男性は自分の将来に夢を持てないのだろうか?
私は最大の理由は日本人男性の経済的責任が重過ぎることだと感じている。男性は結婚すると、自分一人で家族を養わなくてはいけないと思い込む。仮に本当にやりたいことがあっても収入が低かったり、安定していないと、あきらめてしまう。 だから今の仕事にやりがいを感じなくても「家族のためだから仕方ない」と現状維持しようとする。 しかし妻が働いていたらどうだろう。自分の収入が下がろうと、不安定な職だろうと、家計に必要な最低限の収入は妻によって確保されていれば,自分の夢を実現するための行動を起こしやすくなるだろう。
日本以外の多くのアジアや欧米諸国では共働きが当たり前だ。男性は結婚しても自分一人で家族を養おうとは思っていないし、またできるとも思っていない。子供が生まれても、妻が職を辞めるとは、両方とも思っていない。夫婦2人で経済的責任を分担するのが当たり前だ。その分、海外の男性は日本男性より家事を分担している。
しかし最近、日本でも専門性のある仕事で自分の能力を発揮し、結婚後も働き続けたいと望む女性が増えている。これは男性にとってありがたいことだ。経済的に自立している女性と結婚すれば男性の経済的責任はさほど重くならないので、自分のやりたいことを追求しやすくなるからだ。
ある米国人の友人は、夫が失業中だ。彼は興味のある分野で専門性を高めるためにフルタイムで大学に戻って勉強することにした。生活レベルを少し落とすだけで彼が学生に戻れるのは、妻の収入で家計を最低限は守れるからだ。2人には子供がいる。今は時間が比較的自由な夫が保育園の送り迎えや食事の準備を担当している。
数年たって経済が上向いてきた頃には彼は学位を取得しているだろう。そして失業前より高い専門性を生かして再び労働市場に戻っていける。変化の激しい時代、常に勉強しなくては生き残れない。妻が働いていることで、夫はスキルアップのための勉強をしやすくなるのだ。
米国では18才から22才のフルタイム大学生の割合が全大学生の30%以下だという。社会人経験者の学生が多いことを意味している。確かに私の学生時代の友人たちを見ても、卒業後は働きながら大学に通ったり、仕事を辞めて学生になり、修士号や博士号を取得した人たちが驚くほど多い。一度就職しても、勉強を続けなくてはビジネス界で生き残っていくのは難しいのである。
仕事ばかりの日々を過ごしている日本の男性に必要なのは、自分の働き方を見直し、仕事以外の時間を確保することだ。だらだら長く働くのではなく、時間を有効活用し、無駄を省いて私生活の時間を取り戻す。得られた時間を自己啓発、定期的な運動、家族や友人と過ごすことに充てられる。 そうすれば自分の市場価値を高めることもできる。そのうえ大切な人との人間関係もより良いものになる。ひいては人生の満足度を高めることができる。
一家の大黒柱でさえ失業の可能性がある昨今、共働きは家庭の基本的なリスクマネジメントである。これからは男性も女性も働き、夫婦が協力し合って経済的責任と家庭責任を分け合うことが不可欠だろう。
しかし、家庭責任を果たすことで、一番恩恵を受けるのは実は男性自身だ。お金だけ運んできて家にほとんどいない夫より、家庭で過ごす時間が長い夫の方が、妻から感謝されるだろう。一緒に過ごす時間が増えた方が子供にも慕われ、家庭が円満になる。仲の良い家庭が多くなれば、今は増加し続けている少年犯罪が減り、日本社会全体もよくなると思う。

(2003年8月5日号)
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